スーパーコンピュータ「富岳」が解き明かすマイクロ流路における新たな細胞選別技術

スーパーコンピュータ「富岳」が解き明かす新たな細胞選別技術

大阪大学を中心とする研究チームが、高度な数値シミュレーションを通じて、柔らかい粒子がマイクロ流路内で示す集束パターンを解明しました。この研究は、大阪大学、理化学研究所、関西大学、岡山大学の共同によって進められました。

研究の背景

従来、粒子の集束に関する研究は、硬い粒子に焦点を当てて行われてきました。しかし、細胞のように柔らかい粒子の挙動は理解が進んでおらず、特にマイクロ流路内での動きには多くの未解決の問題が残っていました。これまでの数値計算に基づく予測は存在したものの、実験による検証が不足していました。

研究内容と成果

研究チームは、まず柔らかいヒドロゲル粒子の作製技術を確立しました。次に、実験を通じて、これらの粒子がどのように集束するかを検証しました。その結果、流路の壁近くには硬い粒子、そして流路の中心や対角線上には柔らかい粒子が集まることが示されました。

さらに、この研究にはスーパーコンピュータ「富岳」が活用され、大規模な数値計算が行われました。新たに提案された理論モデルを用いて、粒子の集束パターンを説明する相図が生成され、そのメカニズムにも迫りました。この解析により、集束の条件やその الفيذيックさが明らかになり、実際に粒子が変形することによる流れの影響を視覚化しました。

今後の可能性

この成果は、次世代のマイクロ流体デバイスの開発に寄与する可能性が高いと期待されています。特に、細胞や粒子の変形性を利用した新しい細胞選別技術は、がんの早期診断や治療法の選定において重要な役割を果たすでしょう。これにより、医工学分野における革新的な応用が期待されています。

研究発表

本研究の成果は「Journal of Fluid Mechanics」に発表されており、その専門的な内容はさらなる研究に向けた基盤となります。

研究者のコメント

広畑佑真博士課程の研究者は、「粒子にかかる力が非常に小さく、非常に精密な計算を要しましたが、それを通じて新たな理論を立てることができたのは大きな成果です」と語っています。彼はこの研究が社会に役立つ新しい粒子の選別方法としての可能性を強く感じているそうです。

この研究は、日本学術振興会や科学技術振興機構の助成を受けて進められました。マイクロ流路技術の進展が、社会にどのように影響を及ぼすのか、今後の進展が非常に楽しみです。