鳥の色と食:進化の秘密を探る
岡山大学の研究チームが、鳥類の体色や食欲を調整する2つの関連タンパク質の進化を解明しました。アグーチシグナルタンパク質(ASIP)とアグーチ関連タンパク質(AGRP)というこの“兄弟分子”は、共通の祖先から派生したものですが、その性質はまるで性格のように異なります。
鳥類の色と食を支える2つの分子
ASIPは鳥の体色、AGRPは摂食や代謝を制御する役割を持っています。この2つのタンパク質は、いずれもメラノコルチン受容体を介して機能し、それぞれ異なる生理学的プロセスに関与しています。今回の研究によって、ASIPの分泌特性がAGRPに比べて低いという事実が明らかになりました。
研究チームは、ニワトリを用いてASIPとAGRPの細胞からの分泌の違いを比較しました。その結果、ASIPは細胞から分泌されにくい性質があることが判明。さらに、ASIPのN末端ドメイン構造がこの分泌特性に影響を与えていることも示されました。
進化の道筋を解き明かす
ASIPは、プロテアソームによるタンパク質分解を誘導する構造を持ち、そのために分泌が制限されているとのこと。この研究は、これまでは不明だった2つの“兄弟分子”の役割の違い、つまり何故それぞれが特定の機能を果たすようになったかを理解する助けになります。
この分泌特性の違いは、鳥類が「色」と「食」をどのようにして巧妙に制御しているのかという進化の道筋を示しているのです。
研究成果の意義
この研究結果は、2025年11月1日に国際学術誌『Comparative Biochemistry and Physiology, Part B』に掲載されました。この成果は、分子レベルでの理解が、鳥類の色彩や食欲の調整においてどのような影響を及ぼしているのかを示唆しています。鳥の羽の色は、まるで点描画のような精緻さを持つものであり、その表現は非常に高度な調整によって成り立っています。
第一著者である福地響紀大学院生は、こう話します。「ASIPというタンパク質の分泌特性が、色づくりに寄与していることを示しました。この研究を通じて、鳥類がどのように多様な環境に適応してきたかを理解する手助けになると考えています。」
この研究は、岡山大学の次世代研究者挑戦的研究プログラム(OU-SPRING)などの支援を受けて行われ、その成果は今後の研究発展に大きく寄与することが期待されています。
さらなる研究と展望
今後も引き続き、ASIPやAGRPの機能に関する研究が行われ、鳥類の色や食に関するさらなる謎が解き明かされることが期待されます。鳥類の進化の視点から見たこの研究は、将来的には環境適応のメカニズムや生態学的観点からも重要な知見を提供してくれることでしょう。
岡山大学は、今後もこのような革新的な研究を通して、地域社会や国際的な科学界に貢献していくことを目指しています。