岡山大学が解明した触手冠動物の進化：ホウキムシのゲノムを解析

岡山大学が解明した触手冠動物の進化

岡山大学、東京大学、そして中央研究院が共同で行った国際研究が、動物進化における新たな知見を提供しました。この研究では、箒虫動物のゲノムを染色体レベルで解読し、触手冠動物（Lophophorata）の単系統性を明らかにしました。この発見は、100年以上も続いた分類論争に終止符を打つものであり、学術界において重要な進展とされています。

研究の背景と目的

動物の系譜を解明することは、生物学の研究において常に大きな課題でした。これまでの研究では、触手冠動物がどのように進化したのか、またその系統がどうなっているのかについて多くの議論が存在していました。特に、ホウキムシとコケムシの関係については長年にわたり不明確な部分が多く、科学者たちの間で論争が続いていました。

今回の研究は、中央研究院生物多様性研究センターのルオ研究員（Dr. Yi-Jyun Luo）と岡山大学の濱田教授、さらに東京大学の遠藤教授を中心に、これらの未解決の疑問に挑むものでした。特に、ホウキムシのゲノム解読がこの研究の鍵となり、多様な解析が行われました。

重要な発見と解析

研究チームは、ホウキムシのゲノムを初めて染色体レベルで解読し、その結果、触手冠動物の単系統性が確認されました。また、触手冠に共通する相同器官があることをトランスクリプトーム比較を通じて明らかにしました。この発見は、触手冠動物が一つの系統から進化していることを示唆するものであり、今後の研究の大きな基盤となるでしょう。

さらに、研究はゲノム構造比較が動物進化の理解において強力なアプローチであることを示しており、その応用範囲の拡大が期待されています。今後、この手法を用いることでさまざまな動物群の系統分岐が明らかになると考えられます。

研究成果の公表

この研究成果は、2025年11月8日、日本時間の午前1時に米国の科学誌『Current Biology』に掲載されました。研究成果を発表した濱田教授は、牛窓でのホウキムシの採集時のエピソードを語り、技術専門職員の協力によってこの研究が始まったことを強調しました。濱田教授は、「素晴らしいメンバーと共に、国際的な連携を深めていきたい」とコメントしています。

終わりに

この研究は、動物進化に関する理解を新たにし、長年の論争に決着をもたらすものでした。岡山大学が中心となったこの国際的な研究が、今後の生物学分野にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。岡山大学がこのような革新的な研究を推進し、国際的な連携を深めていく姿勢は、地域の研究機関としても鼓舞されるものです。