岡山大学が解明したコオロギの再生メカニズム
国立大学法人岡山大学の研究チームは、コオロギの脚の再生過程において活性酸素が持つ重要な役割を明らかにしました。本成果は、2025年11月20日に発表されたもので、イギリスの発生生物学雑誌『Development』に掲載されました。
研究の背景
ヒトを含む陸上動物は、一般的に器官の再生能力が低く、手足を失った場合でも元に戻ることはありません。一方で、プラナリアやゼブラフィッシュ、アホロートルなどの生物は高い再生能力を持っており、研究者たちは彼らの再生メカニズムに注目しています。これらの生物では、器官損傷後に生成される活性酸素が、細胞分裂を促進し再生を助けることが確認されています。
コオロギからの発見
岡山大学の大学院医歯薬学総合研究科に所属する廣野美紗大学院生をはじめ、複数の研究者が協力して実施したこの研究では、コオロギの脚再生における活性酸素の役割を詳細に調査しました。研究の結果、再生過程で細胞分裂が活発になる時期に活性酸素の生成が増加することが確認されました。
この活性酸素は、細胞分裂の促進だけでなく、かさぶたの形成や傷の修復、血球の移動にも寄与していることが判明しました。さらに、コオロギの消化管の恒常性を保つためや、幼虫の成長、外骨格の形成にも活性酸素が重要であることがわかりました。これらのことから、活性酸素は再生において不可欠な因子であると言えます。
今後の期待
活性酸素の役割に対する理解が深まることで、再生医療の分野において新たな治療法の開発が期待されます。人間の再生能力が低いことは多くの医学的課題ですが、コオロギから得られた知見がヒトの再生医療への応用に繋がる可能性が出てきました。研究チームは、今後もさらなる研究を進めていく意向を示しています。
研究者の声
廣野大学院生は、「失われた組織が再生するという生命の不思議に魅了され、この研究に取り組んできました。予想外の結果が多くありましたが、論文として形にできたことに喜びを感じています。コオロギはただの食材ではなく、我々に再生のヒントを与えてくれる貴重な存在です」と語っています。
このように、いまだ解明されていない再生のメカニズムが、コオロギという身近な生物を通じて探求され、結果として医療の発展に貢献する可能性は非常に大きいと言えるでしょう。今後のさらなる研究から、どのような新しい可能性が開かれるのか、期待が高まります。
岡山大学は、地域社会との共生を図りながら、持続可能な発展に向けた研究を進めています。今回の研究も、岡山大学が掲げるSDGsの理念に基づいた、科学的な探求の一環として発表されました。