岡山大学が解明したミトコンドリアの分配機構と受精卵における役割
2025年8月11日、岡山大学の若井拓哉准教授らの研究グループは、ミトコンドリアの動きが受精卵の発生に与える影響を解明しました。この研究は、ミトコンドリアという細胞内のエネルギー源がどのように卵子から子どもに受け継がれるのかを明らかにし、「母の財産」に例えられるその分配メカニズムを探求したものです。
ミトコンドリアとは何か?
ミトコンドリアは、細胞内でエネルギーを生成する中心的な役割を果たしています。分裂と融合を繰り返しながら細胞内を移動するこの小器官は、特に受精卵の細胞分裂において重要な役割を果たします。受精後、卵割に伴い、ミトコンドリアは効率よく娘細胞に分配される必要があります。
研究の発表内容
今回の研究では、ミトコンドリアの分裂を調整するタンパク質Drp1が欠損した受精卵を観察したところ、ミトコンドリアが凝集し、卵割の際に不均一に分配されることが分かりました。このような分配異常はミトコンドリアだけでなく、小胞体や染色体といった他の細胞小器官にも影響を与え、受精卵の早期発生停止に繋がることが示されました。
特に、正常な卵割が行われる際には、ミトコンドリアが染色体の周囲に均等に配置され、2つの娘細胞に対して対称的に分配されるのですが、Drp1が欠如した場合、ミトコンドリアは中心に偏り、さらには二核を持つ異常な割球ができることが確認されました。
知見の応用と未来
この研究は、受精卵の発生異常に関する新たな知見を提供するものであり、特に生殖補助医療(ART)の安全性や効率性の向上に資する可能性があります。ヒトの体外受精においても類似の細胞内構造の異常が観察されているため、本研究は未来の不妊治療において重要な指針となるでしょう。
おわりに
若井准教授は、「ミトコンドリアはお母さんから子どもに遺伝します。受精卵の分裂過程において、ミトコンドリアを均等に分配することは本質的に重要であり、まるで財産の相続のようです」とコメントしています。本研究は、大学院生が中心となって推進した成果であり、共同研究者への感謝も述べられました。
研究成果に関する詳しい情報は、岡山大学の公式サイトでご覧いただけます。