岡山大学(岡山市北区)は、地域企業との協力を通じてCO₂排出量を可視化する新たなプロジェクトを始めました。この取り組みは、2025年7月に行われたキックオフワークショップに端を発し、岡山商工会議所と連携しています。
参加したのは、岡山大学の天王寺谷ゼミに所属する16人の学生と岡山商工会議所の職員2人です。昨年度から始まったこのプロジェクトは、さらに規模を拡大し、地域の産業界と協力して脱炭素支援を強化することが目的です。
カーボンニュートラルの実現は、企業単体の活動だけでは難しく、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減が求められます。それを実現するためには、まず排出量を「見える化」することが重要となります。このプロジェクトでは、天王寺谷達将准教授のゼミに所属する学生が、岡山商工会議所の会員企業である有限会社東山冷機の製品やサービスについて、経済産業省および環境省のガイドラインに従ってカーボンフットプリント(CFP)を算定します。
ワークショップの中で、舩倉隆央副本部長が中小企業におけるカーボンニュートラルの意義について説明。続けて、天王寺谷准教授がカーボンフットプリントを通じた企業価値の向上と昨年度の活動内容について詳細に述べました。その後、有限会社東山冷機の代表取締役・小原章弘氏が事業内容を紹介し、学生との意見交換が行われました。学生たちからは、オゾン層保護の重要性や再生フロンの効果について多くの質問が寄せられ、熱心な議論が展開されました。
参加した学生たちは、「CO₂排出量の可視化だけにとどまらず、オゾン層保護など幅広い環境問題を考える良い機会となった」と語り、特に「フロン類がCO₂に比べて数千倍もの温室効果を持つことを知って驚いた」といった声もありました。このことから、環境問題に対する意識が高まりつつあることが伺えます。
小原代表取締役は、県内での再生フロン事業に対する新たなアイデアを学生から受け取りつつ、価値創造を目指して進めていく意欲を示しました。今後の計画としては、秋頃に学生と共に有限会社東山冷機の工場見学を行い、製造プロセスを確認しながら必要なデータを収集することが挙げられています。実施の目標は年内のカーボンフットプリント算定を完了させることです。
このプロジェクトの進展は、昨年度に岡山大学が環境省の「地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業」に採択されたことを基にしたものです。今年度はその成果を受けて、支援体制や企業連携を強化し、より実践的な取り組みへと進化しています。
岡山大学と地域企業、さらには支援機関が共に連携して、地域全体の脱炭素化に向けて一層の挑戦を進めていくことが期待されます。次回はこの活動の成果が地域にどのように還元されるか、注目していきたいところです。岡山大学のこの新たな取り組みに、大いに期待が寄せられています。
カーボンフットプリントとは?
カーボンフットプリント(CFP)は、製品やサービスの全ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量をCO₂に換算した数値です。製品に表示されることもあるこの数値は、製造から廃棄、リサイクルまでの過程を含んでいます。詳細は経済産業省や環境省のガイドラインをご参照ください。