捕食者と共存することで進化した昆虫の死んだふり行動の秘密とは
最近、国立大学法人岡山大学から発表された研究が、昆虫の生存戦略における驚くべき進化のメカニズムを明らかにしました。この研究では、捕食者と共存する環境が昆虫にどのような影響を与えるのか、特に「死んだふり」という行動について詳しく調査されています。
死んだふり行動の謎
「死んだふり」は、さまざまな動物によって見られる防御行動です。これは捕食者からの攻撃を回避するために行われるもので、哺乳類や鳥類、さらには昆虫までもがこの行動を取ります。しかし野外でこの行動が本当に進化するのか、長年の間誰も解明できていなかったのです。
実験の設計
岡山大学の学術研究院環境生命自然科学学域の宮竹貴久教授や松村健太郎助教らの研究チームは、貯穀害虫であるコクヌストモドキを対象に実験を行いました。コメグラサシガメという捕食者と共に5世代飼育した集団と、捕食者が存在しない環境で育った集団を比較しました。興味深いことに、捕食者と同居していた甲虫の「死んだふり」の持続時間が、同居していない集団に比べて3倍以上も長くなることが確認されたのです。
研究の意義
この研究は、死んだふり行動が捕食者の存在によって進化することを示唆しています。研究チームは、以前のフィールドデータと併せて、捕食者の存在が昆虫の行動に与える影響を詳細に調査しました。捕食者と共存することで進化したこの行動は、種の存続にとって非常に重要な要素となるでしょう。
宮竹教授の視点
宮竹教授は、「死んだふりが進化する仕組みを解明するためには、誰もやっていない研究に挑戦することが重要です」と語ります。彼は、学生たちと共にこの課題に取り組み、一緒に学びながら研究を進めてきたことがこの成果につながったと強調しています。
まとめ
この研究成果は、2025年7月8日付で「Applied Entomology and Zoology」誌に掲載され、進化生物学の重要な知見として注目されています。捕食者との共存が生物に与える影響についての理解が深まり、今後の生態学や進化論においても非常に興味深い視点をもたらすでしょう。ぜひ、岡山大学のさらなる研究にご注目ください。