岡山大学の新たな発見
2025年10月12日、国立大学法人岡山大学から興味深い研究成果が発表されました。今回の研究は、特殊害虫に指定されているウリミバエ(
Zeugodacus cucurbitae)を対象にしたもので、生物の発育や分布に関連する指標が進化の過程でどのように変わるのかを解明しています。
発育ゼロ点と有効積算温度とは?
これまで、生物の発育や分布に関する指標として注目されてきた「発育ゼロ点」と「有効積算温度」は、病害虫の管理において非常に重要な役割を果たしてきました。これらの指標は昆虫などの変温動物を異なる温度条件下で飼育し、成長の違いを測定することで得られます。基本的には、種ごとに固有の性質と考えられていましたが、実際には集団内でも遺伝的変異が影響を及ぼしていることが確認されていました。
但し、これらの変動がどのような選択圧によって生じるのかについては、あまり研究が進んでおらず、その解明が求められていました。
研究の進展と成果
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の宮竹教授と東京大学の松村助教は、ウリミバエを材料に利用。人為的に選抜した系統を対象に、発育期間や繁殖開始年齢にかかる選択圧が、果たしてどのように生物の発育指標に影響を与えるのかを実験しました。
この研究の結果、幼虫の発育期間におけるゼロ点や、有効積算温度も、選抜された集団間で有意な違いが見られたとのことです。特に、繁殖タイミングの異なる集団間でもこれらの指標には顕著な差が見られ、世代を重ねることで生物の生態が進化的に変化することを初めて示しました。
進化がもたらす生物分布の変化
この研究が示したのは、生き方の速さや繁殖のタイミングに選択圧を与えた場合、長期的に見て生物の分布域を拡大する可能性があるということです。すなわち、生物の環境適応や分布の変化は単に外的要因だけでなく、内部からの選抜圧にも影響されるという新たな視点を提供しています。
環境変化への示唆
宮竹教授は、地球温暖化や外来生物の影響が進む中で、これらの研究が新たな知見を提供し、農業や生態系への影響を予測するための手段となることが重要だと強調しています。また、地道なデータ収集は今後の環境科学において不可欠であると述べています。
まとめ
岡山大学におけるこの研究は、ウリミバエを通じて生物学における進化のプロセスを新たに明らかにした画期的な成果です。生物の生き方がどのように分布に影響を与えるのか、今後の研究に期待が高まります。関連する論文は、Wileyの国際昆虫学会誌に掲載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。